まるごと分かる!インドのEC事情

ECコラム

基本情報

こんにちは。コンサルタントの氏田です。
人口約14億人(2023年現在)を超え、中国を抜いて世界一の人口を持つ国となったインド。無数の宗教と言語が交錯する、世界屈指の多様性を誇る国であり、ヒンディー語、ベンガル語、テルグ語など22の公用語をはじめとする無数の言語と、ヒンドゥー教、イスラム教、シーク教、仏教、ジャイナ教などといった多様な宗教が共存しています。
各地域による文化の違いやアクセスの可否、インフラの発展度などが影響し、インド全土でのマーケティングを行うことは容易でないとされています。しかしながら、その中でも国内企業の成長は著しく、続々と海外の大企業も市場に足を踏み入れています。

インドの急速な経済成長に伴い、ECの利用が急増し、新たなビジネスチャンスが広がっています。ECと並んで、新興産業としてIT業界も目覚ましい発展を遂げています。

インドでよく使われているECは?

次にインドのEコマース事情について、まずは、よく使われているECプラットフォームについて解説します。

  1. Flipkart

    インドのEC市場で大きな存在感を放っているのが、Flipkartです。市場シェアはなんと62%という圧倒的な数字を誇り、インドのEC市場においてその存在は欠かせないものとなっています。Flipkartの誕生は2007年で、短い年月で急速に成長し、現在では推定月間ビジター数が2,780万人という驚異的な数字を叩き出しています。Flipkartは、スマートフォンから家具まで、あらゆる製品を取り扱っており、その商品の幅広さも利用者からの支持を集めています。また、利便性を追求し、多様な支払い方法を提供するなど、インドの消費者ニーズに応えてきました。都市部だけでなく、地方の人々にも広く利用されています。
  2. Amazon India
    Flipkartに続くのは、市場シェアの約26%を占めるAmazonです。Amazonは2013年にインド市場へ進出しました。その頃からAmazonは、グローバルに展開する巨大ECサイトとしての豊富な経験とノウハウを活かし、インドの消費者に迅速な配送と幅広い商品ラインナップを提供してきました。そのグローバルブランド力と物流ネットワークを武器に、インド市場における存在感を増しています。しかしながら、市場シェアにおいてFlipkartが上回っている理由としては、Flipkartがインド国内で生まれ育ったECサイトであるため、インドの消費者のニーズや市場の特性を深く理解していることが挙げられます。
  3. Meesho

    インドのEC市場において特筆すべき存在がMeeshoです。Meeshoは2015年に設立され、その独特なビジネスモデルで急速に成長を遂げています。ファッションを中心に、家具、電化製品など多岐にわたる商品ラインナップと、女性を中心とした顧客層を抱えていることが特徴です。Meeshoはソーシャルコマースと呼ばれる、ソーシャルメディアを活用した新しい形のECです。一般のユーザーが自身のソーシャルメディアネットワークに対して商品を販売するためのプラットフォームを提供しています。
    これまでのインドEC市場を牽引してきたAmazonやFlipkartとは異なり、Meeshoの独自の強みはそのソーシャルコマースモデルにあります。一般のユーザーが自分のソーシャルネットワークを活用してビジネスを展開できるため、Meeshoは小規模のビジネスオーナーや個人販売者にとって非常に魅力的なプラットフォームです。インドの社会経済的な状況を考えると、Meeshoのようなビジネスモデルは多くの人々にとってチャンスを提供し、その結果として広範な顧客層を獲得しています。この新たな形のECは、インドのEC市場に新たな風をもたらしています。

インドでよく使われている決済方法は?

インドで人気のEコマースについて見てきましたが、インドは決済方法も特徴的です。

  1. UPI

    UPIは、インドの小売支払い全体の10%を占め、その総取引額はインドのGDPの約86%に相当する、インドの即時決済システムです。
    スマートフォン上のモバイルアプリを通じて、銀行口座から直接、送金や支払いを行うことができます。24時間365日、いつでもどこでも即時に送金や決済が可能です。クレジットカードなどの決済システムとの大きな違いは、カード発行会社を介した仲介型の決済であるクレジットカード決済とは異なり、直接銀行口座間での取引を行うため、手数料が低く、また即時に送金・受取が可能だという点です。UPIがインドで大きな浸透を遂げている背景には、インドの銀行口座普及率の向上とスマートフォンの急速な普及が挙げられます。特にスマートフォンはその低価格化により広範な人々に普及し、銀行口座を持たない人々にとっても手軽に利用できる決済手段となりました。また、インドの一部地域では銀行の支店が少ないため、モバイル決済が現金を持つリスクを減らし、また取引の機会を広げる重要な役割を果たしています。
  2. モバイル決済
    インドでは、UPIを基盤としたモバイル決済が大変な人気を博しています。
    88%のインド人が モバイル決済を利用しており、世界平均が71%であることを考えると、かなり浸透していることが伺えます。インドにはPaytm, Freecharge, Mobikwik, Oxigen, mRuppee, Airtel Money, Jio Money, SBI Buddy など、15種類以上のモバイル決済がありますが、その中でも最も人気のモバイル決済はPhonePeで、決済利用率47.7%と圧倒的なユーザー数を誇ります。PhonePeに続くのが皆様ご存知のGooglePayで33.9%、さらに利用率14.9%のPaytmが続きます。

PhonePe:

PhonePeはインド最大のモバイル決済システムで、Flipkartが提供する決済プラットフォームとして2015年に設立されました。デジタル決済だけでなく、保険や投資といった金融商品の購入にも対応しています。ビジネス向けの決済ソリューションも提供しており、中小企業や個人商店などに特に人気です。

Paytm:

Paytmはオンラインリチャージや水道、ガス、電気といった日々の支払いなどのサービスを提供する最初のプラットフォームとして、その名を広く知られるようになりました。また、Paytmはpaytm mall というEコマースも運営しています。さらにPaytm Bankという独自の銀行サービスを運営しており、銀行口座を持たないユーザーや非都市部のユーザーに対してもそのサービスを提供しています。これらのモバイルウォレットは、UPIと統合されており、ユーザーは銀行口座と直接リンクさせることで、簡単に決済や送金を行うことができます。このため、インドにおける電子決済の普及を大いに推進しています。

物流インフラ

インドは広大な国土と急速に成長する経済を持つ国として、効率的かつ信頼性の高い物流インフラの重要性がますます認識されています。多様な言語、地理的な挑戦、都市と農村部の経済格差など、インド独特の事情が物流業界にも影響を与えています。ここでは、そんなインドで活躍する主要な物流会社をいくつか紹介します。

  • Blue Dart:
    Blue Dartはインドで最も信頼性の高い国内・国際物流会社の一つで、DHLグループの一部です。24時間365日対応の顧客サポートやリアルタイム追跡サービスが特徴で、時間指定の配送も可能です。ただし、他の物流会社に比べてコストが高い傾向があります。
  • DTDC:
    DTDCはインド内外の荷物輸送を手掛ける大手物流会社で、国内では10,000以上のピンコードをカバーしています。価格が手頃で、範囲が広いため、多くの中小企業やEC事業者から選ばれています。ただし、都市部ほどではないが、一部地域では配送の遅延が報告されることがあります。
  • Gati:
    Gatiはインドの主要都市をカバーしており、急速な配送が必要な商材に適しています。24/7の顧客サポートやオンライン追跡システムがあり、さまざまな配送オプションを提供しています。しかし、農村地域への配送は限定的です。
  • Delhivery:
    Delhiveryはインド国内の全地域をカバーしている大手の物流会社で、eコマース用物流が主力です。同社は、約17,500ピンコードエリアをカバーし、24時間365日の顧客サポートを提供しています。また、物流だけでなく、倉庫管理、在庫管理など、一連の物流サービスを提供しています。
  • Ecom Express:
    Ecom Expressは、特にeコマース業界に焦点を当てた物流サービスを提供しています。現在では、インド全土の約27,000ピンコード地域をカバーしています。追跡システムや時間指定配送もありますが、コストは中程度となります。

まとめ

急速な経済成長と人口増加が進むインドは、今後の越境EC事業を展開する上で見逃せないマーケットとなっています。しかしながら、この急速なデジタル化の進展とは裏腹に、まだまだ運用上の課題が存在するのも事実です。データ保護の規制がまだ整備途中であるなど、本格的なビジネス展開を考える場合には、現地の調査や競合企業の研究が不可欠となります。

それでも、インドはSNSの利用者が急増しており、デジタルチャネルの利用がさらに拡大することは確実でしょう。その独特の文化や言語の多様性を理解し、効果的なSNSマーケティングを検討することも重要となります。そのため、このような特性を理解し適応することで、インドという国は大きな機会と可能性を秘めていると言えるでしょう。一見課題が多そうに見えますが、これらをクリアすれば今後のインド市場は非常に大きな可能性を秘めています。

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