コミュニティ施策はオンラインで完結しない。創業の地・小豆島との再接続が「かどや」ブランドにもたらすもの


ファンマーケティング、D2Cなど言葉はさまざまだが、いま顧客と直接つながろうとする企業が増えている。この連載では、コミュニティをはじめとするPRM(パートナー・リレーションシップ・マネジメント)を実践するパートナー企業への連続インタビューにより、「なぜ直接つながる必要があるのか」「それに伴い企業は何を改める必要があるのか」を明らかにする。インタビュアーは花王で長らくブランドマーケティングに携わってきた弊社エグゼクティブ アドバイザーの石井 龍夫が務める。


黄色いキャップのごま油でお馴染みの「かどや製油」が、2022年5月に立ち上げたオンラインコミュニティ「ごまラボ」。創業の地・小豆島のリアルコミュニティと連動したコンテンツを発信していたり、ユーザー発案のレシピを自由が丘のごま専門カフェ「goma to(ゴマト)」のメニューに採用したりと、まだ立ち上げたばかりでありながら、オンラインに完結しない施策が目立ちます。

一連の取り組みの仕掛け人は、取締役常務執行役員の中山裕章さん。当初は社外監査役として同社と関わりを持ったという中山さんは、創業165年の老舗企業が持つポテンシャルに可能性を感じた一方、その魅力を十分に発信できていないことに物足りなさを感じたそう。そこで2020年に入社した後は、自ら陣頭指揮をとってリブランディングに乗り出すことに。

ブランディングにコミュニティはどう効くのか。オフライン・オンラインを連携して取り組む同社の取り組みについて、中山常務、現場の運営担当である菊地菜々さんに聞きました。

もったいない会社

——小豆島との関連など、御社はオンラインのコミュニティをリアルとうまくつなぎ、それをブランディングにまでつなげている印象です。今日はその辺りを中心に聞きたいのですが、まずは立ち上げの経緯から伺えますか?

【中山】ご質問に直接お答えする前に、前段として、なぜ私が「この会社に来たい」と思ったかから話させてください。個人的な話で恐縮ですが、そのことがご質問の答えと関わってきますので。

私は前職の三菱商事で30年近く食料の仕事をしてきました。三菱商事はかどやの筆頭株主であり、私は7年前に1年間、かどやの社外監査役を務めることになりました。毎月役員会に来て、経営状況などを聞いていました。

その中で思ったのが「もったいない会社だな」ということでした。会社としてすごくいいところがあるし、いいことをしている。それにも関わらず、その良い価値を社内外に十分にアピールできていないと感じました。

かどや製油株式会社 取締役常務執行役員 国内事業本部長兼海外事業本部担当 中山裕章氏

——いいところというのは?

【中山】一つは、小豆島との関係性です。かどやは165年前に小豆島で創業しました。

小豆島には「オリーブ」「風薫る島」「綺麗な海と空」など非常にいいイメージがあるかと思います。当社はそこで愚直に165年間の長きにわたりごま油をつくってきましたが、そのことをとくに社外へあまりアピールしていなかったのです。かどやの商品を知っているお客さまでも、ほとんどの方は製品が小豆島で作られているとは知りません。

要するに価値を引き出しきれていない。ちゃんとアピールしてファンを増やせば、もっと価値を上げられると思いました。

——確かにPRしないのはあまりにももったいない素材ですよね。

【中山】「もったいない」ことはほかにもありました。かどや製品の原料となるごまはほとんどがアフリカ産です。アフリカの農家の方々が作ったごまを輸入しているのです。そのごまを栽培している地域は概ね乾燥していて決して肥沃ではなく、とうもろこし、大豆、小麦といった、農家にとって高収入が期待できる作物を栽培することが難しい地域です。だから、乾燥・高温の地域でも育つほどの驚異の生命力を持つごまを手間暇かけて栽培しているんです。つまり、決して豊かではない農家の皆さんが我々の事業を支えてくれています。

であれば、当社としてはそういう方々を支援するプログラムを作ることもできますよね。これはSDGsに資すると言える。我々はそういうことをする立場にあるわけです。

さらに、我々はそうやってアフリカ他、生産地から輸入してきたごまをほとんど全部使い切っています。廃棄はほとんどない。0.5%未満です。具体的に言いますとごま油というのは、原料のごまを搾ります。原料のうち約50%が油になりますが、残った50%の搾りかすは実は栄養に富んでいて半分近くはタンパクです。我々はこれを動物の飼料用副原料として販売しています。つまり、原料ごまがほとんど廃棄することなく、循環型で事業を回しているんです。

小豆島での地域との共存、アフリカ農家支援、食品原料廃棄率ほぼゼロ。この3つに加えて、近年は海外、特にアメリカ向けをはじめとする北米大陸向けの輸出に力を入れてきました。それでも当社の海外向けの売上高は売上全体の約20%弱です。今後は北米大陸のみならず世界に向けて当社の製品をもっと輸出していきたいと思っています。

今申し上げた4つのポイントが消費者の皆さまをはじめとするステークホルダーの方にしっかり伝わったら、この会社はもっと魅力的に映るのではないか。そう思ったことが、この会社に来るきっかけでした。

——ブランドは「商品と情報がセットになって初めてお客さまの心の中に生まれるもの」と言われます。だからどちらが欠けてもブランドとしては成り立たない。なおかつ、いいことさえやっていれば自然と伝わる時代でもないですから。

【中山】そうなんです。伝えないと始まらない。そのためにはホームページなどでアピールするのも大事ですが、我々のビジネスは家庭用においては「BtoBtoC」。すなわち、商流の中に卸店や小売が入っていて、商品を直接手に取っていただく消費者と直接あまり話せていない課題がありました。

ですから、なんとしてもコミュニケーションツールを開く必要があった。喩えて言うなら「オフラインコミュニケーション」と「オンラインコミュニケーション」の両方をやった方がいいと思いました。

オンラインコミュニティの「ごまラボ」、オフラインが自由が丘に開いた実店舗の「goma to」です。その両方で、たとえばごまの新しい使い方や料理の仕方を提案したり、先ほどの4つの点をアピールすることで「江戸時代から変わらずにやっている古臭い会社だと思っていたけれど、一生懸命いろいろな新しいことをやろうとしているんだな」とわかってもらえるんじゃないかと考えました。

2022年6月に東京・自由が丘にオープンした、かどや製油が初めて手掛けるカフェ「goma to」

一つのビジョンの下に「ピン留め」する

——今、オンラインとオフラインと仰いましたが、企業はカスタマーセンター、SNS、コミュニティなどお客さまとのいろいろな接点を持っています。しかし、これを全部別々の部署がやっていて、言っていることがバラバラだとうまくいかない。お客さまのネガティブな反応にもつながりかねない。どうにかして一貫性を持たせる必要があります。

【中山】おっしゃる通りで、3年前にこの会社に来て最初に感じたのがその問題でした。

何のためにかどやは存在し、一人一人はなぜここで働いているのか。お客さまにどんな価値を提供していて、どういう理由でお客さまに選んでもらうのか……。こうした問いに対する明確な答えがありませんでした。

そこで1年ちょっとかけて社内で議論を重ね、2022年4月に「ごまで、世界をしあわせに。」というブランドコンセプトを作りました。「世界をしあわせに」という言葉には「周りの人をしあわせにする」「地球環境に害を与えない形で事業をする」という二つの意味を込めています。

こうしてまず“目指すべき軸”を定め、それに基づいて各事業部門で何ができるかを考える。そういう流れを作りました。

——とても大事なことです。

【中山】ごまというのは、栄養成分構成を見ても小さな一粒の中にセサミンなどのゴマリグナンを約1%含むエネルギー源となる脂質や、良質なたんぱく質、カルシウム、鉄分などの栄養成分がギュッと詰まっているスーパーフードです。我々はとても良い食品原料をベースに事業を組み立てている。その価値を最大化すべく、みんなでいろいろやろう、というコンセプトです。そのコンセプトをベースにある人は売る。ある人はつくる。ある人は新商品の開発。ある人は我々のようにPRする。それはそれぞれでいいのですが、いずれにしろ最初にピン留めしないといけないと思ったわけです。

そのためにはまずは社内の人にしっかりと理解していただく必要があると考えています。

消費者の皆さまをはじめとするステークホルダーとダイレクトコミュニケーションができる体制が整ったとしても、発信者である我々がまず腹落ちしていなければ、説得力も迫力も持たせられないですから。

——そのビジョンをお客さまと共有する場がこのコミュニティなのだと思いますが、そこではお客さまとどのような関係を築いていきたいと考えていて、そのために具体的にどんな活動をされていますか?

【中山】試行錯誤しつつ、いろいろな手を打っています。これは菊地から話した方がいいでしょう。

【菊地】私たちとしては、かどや製油という企業や製品に共感してもらえるお客さまを増やしたい、その方々と対等な関係で話せるようなコミュニティがいいと思っています。ポジティブなことばかりでなく、「もっとここを改善してほしい」といった率直な意見も含め発信していただき、お互いで高め合いながら一緒に上を目指していこうという良好な関係を作れたらいいと考えています。

かどや製油株式会社 マーケティング推進部 商品マーケティング課 販売マーケティングチーム 菊地菜々氏

【中山】これはコミュニティを立ち上げる前の話ですが、2年前に「健やかごま油」というトクホの新商品を出したんです。毎日大さじ一杯(14g)を継続して摂ると、血清LDLコレステロールを減らすのを助ける。そういう消費者庁のお墨付きがある商品です。
●許可表示/本品はセサミン・セサモリンが含まれており、血清LDLコレステロールを減らすのを助けます。血清LDLコレステロールが高めの方におすすめします。
●食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。


ですが、ただ「健康、健康」とだけ言っていてもダメで。我々としてはいかに健康に寄与する商品にできるかを考えて研究開発していたのですが、「トクホはあまり美味しいイメージがない」という消費者の声があり、ハッとさせられたことがありました。当たり前の話ではあるのですが、お客さまとの双方向の意見交換はすごく重要だと思いました。

ですから菊地が言うように、対等な関係でいたいと思っています。

【菊地】そのための具体的な施策としては、たとえばレシピの投稿コンテンツがあります。ごまを使った面白い料理のレシピを投稿してもらい、特にいいものについては「goma to」のメニューとして実際にお客さまに提供する。これまでにデザート3品を採用しています。

活発に活動していただいているファンの方には「goma to」に来店してもらい、食事をしながらごまの魅力や歴史、弊社のことなどについてディスカッションするといった試みも行っています。

「goma to」で提供している会員考案レシピ「白ごまカスタードと苺のミルフィーユ」

——まさにオンラインとオフラインをミックスするような施策ですね。そうした施策を通じてパートナーになってくれた人には、御社として何を期待していますか?

【菊地】私たちとしては、かどやファンを一緒に作っていただきたいです。周りを巻き込んで一緒に活動してくれる、同じ目線で一緒に活動してくれることを期待しています。

【中山】簡単に言えば、自発的に宣伝してたくさん仲間を増やしていってくれたらいい、かどやの活動に共感してくれる方々も自走してくれるといいなと思っています。でも、そのためには我々の活動を深く理解してもらわないといけないし、そのためにはまずネタがないと始まらない。それを「ごまラボ」でも日々発信しているわけです。

社内の啓蒙活動も双方向で

——かどやさんがお客さまに期待することはわかりました。一方、コアなファンになった人は何を望んでいるのでしょうか。お客さまにとっての、かどやとつながる価値とは?

【菊地】始めて1年ちょっと経ち、「ごまラボ」の会員は現在約11,000人います。その多くはおそらく「ごまや商品が好きだから」という理由で入っていただいていると思います。そこから徐々に「どういう人が働いているのか」とか「どういうふうに作られているか」といったことにも関心を持っていただいているのかなと。

それこそ小豆島発祥だとお伝えすると「もっと早く知りたかった」「そうすればもっと好きになっていた」といったコメントもいただきます。特にユーザーさん同士、我々含めたごま好き同士で新しい発見を一緒にしていけるところに魅力を感じていただいているのではないかと思います。

そうやって新しい、今まで知らなかった情報が知れるという価値に加えて、共創コンテンツにおいてはかどや製油に認識されている、信頼を得て一緒に取り組めているといった自己肯定感、承認欲求を満たせるといった価値もあるかもしれません。

感じ方は三者三様ですが、ごまを起点とした“しあわせ”という価値をより深く感じていただけていたら嬉しいですし、今後も届けていきたいと考えています。

——イーライフが支援する他社のコミュニティと比較すると、「ごまラボ」のアクティブユーザーには男性が多いというデータがあります。女性「7」に対して男性「3」というのはかなり高い比率です。その理由として思い当たることはありますか?

【菊地】これは推測ですが、町中華や居酒屋の「ガッツリ系メニュー」にごま油がよく使われるので、そういうものを好む男性が結構いるのかもしれないです。

【中山】驚かれるかもしれませんが、コロナ以降、家庭内でのごま油の消費量が20%ほど増えているんです。在宅勤務や行動制限の中でごま油に「意外と使い道がある」と気づかれた方が増えたと思っています。

——そういう理由に加えて、「かどやとして伝えたいこと」と男性の親和性が高いということもあるのかもと思ったのですが。

【中山】そうですね。私もそうです。女性に限らず男性も商品の裏側にあるストーリーや歴史に大いに関心があるかと思います。

昨年3月頃に小豆島がとあるTV番組で特集されたんですが、その時も「江戸時代から食の宝の島だった」という打ち出しでした。味噌、醤油、そうめん、ごま油。石切場があってとてもいい石が出るので、全国から人足が集まり、食文化が栄えたのだ、と。

そうしたら、番組内に少しだけ映った弊社の商品を見て、複数の友人が連絡をくれたんです。「かどやが小豆島でずっと頑張っていることを知って感動した。もっとアピールをしたらどうだ。」とアドバイスをいただきました。

——そこはもしかしたら新たなビジネスチャンスかもしれないですよね。

【中山】ええ。ただ、こういうのは木の年輪のように粘り強くやることが肝心だと思っています。これは私の感覚ですが、今日やったから明日効果が出るといったものではないと思うので。

だからこそ、社内でもなかなか理解されない苦労があります。

——コミュニティの効果は必ずしも人数では測れません。人を集めるのが目的ではなく、お客さまとのあいだに絆を作り、ブランド価値を上げるのが目的ですから。そこを理解してもらえずに苦労している現場の人は多いです。中山さんのような上のポジションの人が「時間をかけて育てよう」と言うと、すごく助かるんだと思いますね。

【中山】石井さんには完全に「釈迦に説法」ですが、同じ広告やPRをするにしても、企業の価値を中長期的に高めていくものと短期的に高めていくものがありますよね。ですから、企業ブランディング系と販売促進系をちゃんと分けて考えないといけないと思っています。

——社外にファンを作るのもそうですが、やはり社内にも理解してもらう必要がありますよね。

【中山】そうですね。それは極めて重要です。そのために職場大会を開いていくのですが、「部単位ではなく課などのより小さい単位で説明していくことが重要」とよく言っています。小さい単位の方がより双方向で対話できると思っているからです。

——ちなみに、その対話というのは誰が担当しているんですか?

【中山】マーケティング推進部の部長以下、手分けしてやっています。部長だけで全部説明しているのでは到底無理なので。何班かに分かれて各課を回り、ディスカッションをして、理解してもらい、「共にやって行こう!」と草の根でやっています。

そのためには最初の宣教師を担うマーケティング推進部の一人一人がコンセプトを深く理解している必要がある。深く理解した上で、社内外に向けて啓蒙することで説得力や迫力につながると思ってやっています。

「お客さまとの関係を深め、ブランド価値を向上させることがコミュニティの目的」と語る、イーライフ エグゼクティブ アドバイザー 石井龍夫

小豆島で165年。ようやく架かった“橋”

——「ごまラボ」のいい部分の一つは、デジタルのコミュニティと小豆島というリアルコミュニティをうまくつなげているところだと思います。これは意図して作ったものなのでしょうか?

【中山】お恥ずかしながらこれは意図して作りました。始まったのはこの2年の話です。創業以来165年もいて、現時点では約200人の雇用に貢献しながらも、今までは行政と一緒に取り組みがあまりできていませんでした。

けれども、我々はもちろんですが、小豆島の方々にとってもごまを通じて小豆島をPRするのは悪くないと思ってもらえるはずです。小豆島は日本列島の中でも観光客の多い離島。コロナ禍以前では年間100万人が訪れていました。その方たちに向けてPRできていなかったら、お互いにもったいないですよね。

我々は小豆島生まれであることに誇りを持っています。小豆島の工場で働いている人の9割以上は島生まれ島育ちです。彼らに「メイドイン小豆島」にプライドを持ってもらうためにも、しっかりと取り組んでいった方がいいだろうと思いました。

それで昨年の夏に行政にお話をしに行って我々の想いを伝えたところ、「ぜひ一緒にやりましょう」と言ってもらえました。

以来、行政主催のフェアを東京でやる時などには一緒に取り組みをさせていただくようにしています。

——行政もそうですが、「小豆島カメラ」のように、現地コミュニティの人たちとも積極的に関係性を築こうとしているのがいいと思いました。

【中山】おかげさまで、いいかたちでご協力いただいています。我々は165年目にしてようやく小豆島と言い出した“新参者”ではありますが、もっともっと関係性を深めていきたいです。

「goma to」でも今年の夏に小豆島の食材を使った料理を出すフェアをやりました。今後はそれをまた「ごまラボ」でもレシピとして共有するなど、ありとあらゆる方法で「メイドイン小豆島」を打ち出していこうとも思っています。

小豆島に暮らすメンバーで活動している「小豆島カメラ」。ごまラボでの連載「小豆島カメラ× かどや製油」では、日々の暮らしの中で出会った小豆島の魅力を発信している

——「小豆島」「goma to」「ごまラボ」の三つをコアにして、長期レンジでブランドの価値をお客さまと共に作り上げるチャレンジということでしょうか。三つがうまい具合に回遊していけば、素晴らしいコミュニティになりそうです。

【中山】そのためには我々も今まで以上に「ごまの熱狂的ファン」にならないといけないと思っています。

「ごまラボ」を作るにあたってはカゴメさんの取り組みを随分と参考にさせてもらいましたが、カゴメさんは世の中に「トマトの熱狂的ファン」を作るべく、社内外でさまざまな活動をしていらっしゃる。

繰り返しになりますが、ごまはそれだけの価値のある商材なので。我々にはまだまだ成長する余地がある。ファンの方と一緒に成長していきたいですね。

インタビュー後記
「PRM実践企業訪問」 第4回は、かどや製油株式会社さまを訪問させていただきました。
ファンマーケティングやコミュニティマーケティングというと、とかくオンライン施策中心で、目標も参加人数や売上貢献としがちですが、かどや製油さまの場合は地域コミュニティも巻き込んだブランディングが大きな目標である点が特に印象に残りました。
特に近年、企業の社会的責任が問われる中で、グロ-バルではESGを経営の中核に置く企業が増えています。出自である小豆島やごまの生産地であるアフリカという地域コミュニティへの支援やゼロエミッションへの取り組みなど、かどや製油さまのビジョンや活動はまさにESGを体現するものです。
そして、そのビジョンをお客さまと共有する場がオンラインコミュニティである「ごまラボ」ですが、コミュニティで投稿されたメニューが実店舗の「goma to」の料理として提供されたり、小豆島の日常が「ごまラボ」で紹介されるという連係の中で、会員だけで無く地域や店舗利用者というコミュニティ内にもビジョンが浸透していくのだと思います。
オンラインコミュニティである「ごまラボ」と「小豆島」という地域コミュニティ、そして、ごまを使った美味しい料理を提案するカフェレストラン「goma to」、これらが三位一体となって再構築される、かどや製油さまのこれからのブランディングに注目していきたいですね。(インタビュアー/石井 龍夫)
イーライフ エグゼクティブ アドバイザー 石井 龍夫
花王株式会社にて14年間、数々のブランドマネージャーを歴任。新規事業としてアジエンスも立ち上げ。2003年からweb活用戦略立案・企画運営に携わり、デジタルマーケティングセンターを設立。センター長としてデジタルマーケティング活動を統括。2017年イーライフ エグゼクティブ アドバイザー就任。
早稲田大学 大学院経営管理研究科 非常勤講師、日本マーケティング協会マーケティングマイスター、日本アドバタイザーズ協会デジタルメディア委員会 委員、広告電通賞ブランドエクスペリエンス部門 審査委員長、C Channel株式会社監査役に携わる、マーケティングの第一人者。

(構成/鈴木 陸夫)