グローバルコマースの未来「アドテック東京2022」レポート

はじめに

こんにちは。イーライフ広報担当の市川です。
2022年10月20~21日、東京ミッドタウン&ザ・リッツ・カールトン東京で開催されたアジア最大級のマーケティングカンファレンス「アドテック東京2022」に弊社はEXECUTIVE STAGE Sponsorとして参加しました。21日には同会場Exhibition Stageにて、東映アニメーション株式会社の浮田氏、Shopify Japan 株式会社の広瀬氏と共に、弊社山本が登壇し、グローバルコマースの未来についてトークセッションを行いました。本記事では、そのレポートをお届けします。

登壇者紹介

東映アニメーション株式会社 営業推進部長 浮田 康平氏
2004年東映アニメーション入社。製作部にて映像制作業務に従事。その後、版権業務、イベント業務等に関わり2021年より現職。

Shopify Japan 株式会社 シニアパートナーマネージャー 広瀬 力氏
2021/11~現職
2018/09~21/09 Oracle
Alliance & Channel(ERP/SCM/HCM/CX Partner Business Development/Partner Marketing)
Innovation Alliance(CX New Partner Business Development)
2017/08~18/08 MonstarLab Business Producer for a Vietnamese company
2010/06~17/07 Bird Eye CEO(EC Consulting & Operation company

株式会社イーライフ 執行役員 テクニカルディレクター 山本 達也
2011年イーライフに参加、クライアントのWeb構築、自社サービス構築など数多くのプロジェクト牽引と同時に、当時は国内に数社のみだったShopify Plus パートナー企業の認定に大きく貢献。現在はイーライフのD2C事業責任者として、Shopifyを熟知したエキスパートの立場から開発から運用までプロジェクトの全フェーズを統括。真にユーザーオリエンテッドなグローバルD2Cのあり方をクライアントに提案と啓蒙を行う。

(左から)弊社執行役員 テクニカルディレクター 山本 達也、東映アニメーション株式会社 営業推進部長 浮田 康平氏、Shopify Japan 株式会社 シニアパートナーマネージャー 広瀬 力氏

デジモンが抱えていた課題とは

東映アニメーションの「デジモンシリーズ」は、1999年に大ヒットした「デジモンアドベンチャー」を始まりに以降何本ものシリーズ作品が作られてきました。
しかし、時代を経て2024年に25周年を迎えるデジモンというコンテンツはいくつかの課題を抱えていたと浮田氏は言い、当時を振り返ります。

テレビ・映画などの映像を一方的に伝える時代の終焉

「ひとつめは、視聴率や興行収入を考える上で、アニメはどうしてもマスマーケティングで作品制作をします。ですが、多様化した現代の消費者にはターゲットが明確でないと強く響かないですね。また従来のコンテンツ制作であればクリエイターの一方的な発信によって成り立っていたのですが、今はネットで誰もが発信でき、双方向の情報が飛び交うので一方的に伝えるだけでは難しいと感じていました」

デジモンファンの分断

「そして、デジモンは20年以上続くシリーズのため、各作品それぞれのファンは多いが、デジモンユニバース(デジモン全体)のファンは意外と少ないと感じました。今後も同じように最新作をクリエイティブするだけでは、分断が生まれてしまい、デジモンユニバースの拡大につながりにくいと思います。テレビアニメを見ていた層が30歳前後と子供を持つ人も多くなったため、親子2世代で楽しんでもらう場を設けたいと考えました」

多く存在する海外ファンへの対応不足

「また、日本市場に限らず、ありがたいことに世界的にもデジモンは人気があると感じています。欧米やアジア各国にも熱狂的なファンがいるにもかかわらず、新商品や制作発表などを多言語で対応できておらず、結果的に日本のファンファーストの情報発信になっていることも気がかりで課題に感じていました」

CSAやPRMを意識したコミュニティづくりと自社ECが課題解決のカギ

弊社山本は、コミュニティづくりに必要な考えとして、イーライフの基本概念である「CSA」と「PRM」について解説しました。

「CSAは”クリエイター・サポーター・オーディエンス”の頭文字を取った弊社の造語です。従来のコンテンツはクリエイターの一方的な発信でも成り立っていましたが、現在ではありえません。ましてやコミュニティサイトの成功にはCSAの三層構造が必要不可欠です」

※図をクリックすると「イーライフの基本概念:CSAとは?」ページに遷移します

「また、PRMは”パートナー・リレーションシップ・マネジメント”の略です。これも弊社の造語であり、CRMからさらに一歩踏み込んだ考え方です。企業と同じ目線で協働してくれるパートナー顧客を創出していくというものです」

※図をクリックすると「イーライフの基本概念:PRMとは?」ページに遷移します

この概念には浮田氏も共感されました。

「デジモンを支えてくれているサポーターの方々を大事にし、サポーターがサポーターを広げ、さらにはオーディエンスに広がっていくコミュニティを作れればと、さらにファンの声に耳を傾けたデジモン活性化プロジェクトを企画し、コミュニティサイトの立ち上げに至りました」

そして、2021年4月、デジモン公式ファンコミュニティサイト『デジモンパートナーズ』を開設します。『デジモンパートナーズ』には、Shopifyを使用した自社ECサイト『DPショップ』も併設しています。

ここで実際に『デジモンパートナーズ』で行った施策を浮田氏に紹介いただきます。

共創プロジェクトの実施

「『デジモンパートナーズ』では、ユーザーから”こんなグッズが欲しい”という意見を募って、オリジナルグッズを作る企画を実施しました。ファン同士の意見交換も活発になり、さまざまなアイデアが飛び交いました。
あまりにも熱量が高すぎて、我々の受け止めきれないぐらい面白いアイディアが出てしまうということも多々ありました。この熱量を大事にして行きたいなと思ってます。
”みんなでデジモングッズを作ろう”の第一回は”等身大ぬいぐるみ”と”スマホケース”に決定したのですが、その過程には2,998名のファンが参加し、総PV数は35,312まで伸び、私たちの予想を上回りました」

『デジモンパートナーズ』で行った施策を説明する東映アニメーションの浮田氏

「さきほど、『デジモンパートナーズ』にはShopifyを使用した自社ECサイト『DPショップ』も併設しているとお話しましたが、この共創プロジェクトで完成した商品も、その『DPショップ』で販売しています。『DPショップ』は各SNSからのアクセスが容易でユーザーが購入しやすく、初年度の売上目標の180%を達成しています」

ファンミーティングの開催

「ファンが参加して意見を交換し合うファンミーティングを定期的に開催しています。その際アニメ、フィギュア、ゲーム、雑貨などジャンルを分けて、共通の話題を求めるファンが参加しやすい形になるようにしました。また参加者をあえて少人数に絞り、誰もが多くの発言機会があるように配慮したことでファン同士のコミュニケーションの質も高められていったと感じています」

サイト内で英語対応を開始

「サイト内には、FacebookやTwitterのように、打ち込んだメッセージをその場で日英相互に翻訳できる機能を搭載しました。日本と海外双方のユーザーがお互いに交流でき、グローバルユーザーにとっては日本のデジモン情報を入手できるというメリットも生まれて喜ばれました」

「このように『デジモンパートナーズ』ではこのような施策を中期的に、継続的に行っています。一体感をもつファンが増え、ファン同士で新たなファンを拡げてもらう効果が生まれています」

浮田氏の話を聞いて、弊社山本は「この話を聞くと、もしかしたら熱量の高いファンが多いデジモンに限った話ではないかと感じる人もいるかもしれませんが、決してそうではありません。運営とコミュニティユーザーのコミュニケーションがキッチリ取れていれば、必ずパートナーという方々が出現してきます。そのパートナーが増えていくことで、コミュニティも自走式になっていくケースがあるのです」と説明しました。

グローバルコマースの未来は「ニッチ」から。グローバルニッチ戦略3つのポイント

『デジモンパートナーズ』には、自社ECサイト『DPショップ』を併設していますが、さきほどの共創グッズをはじめ、多くのデジモングッズをオンラインで購入することが出来ます。こちらのプラットフォームになっているのがShopify Plusです。

ここで広瀬氏はSNSを含めてどこでも買えるプラットフォームとしてShopifyが注目されていると語ります。

「やっぱり自社サイトだけだと、どうしてもお客さんとの接点が単一的になりがちです。でも、消費者の居る場所はTwitter、TikTok、Instagramなどとさまざまなんですよね。つまりあらゆるチャネルに、それぞれアクセスする時間帯も分散してきています。消費者との接点がますます多様化する時代に、スピーディーに対応できるコマースプラットフォームがShopifyであると判断し、お声がけいただいたと理解しています」

弊社山本は、今後は国内のみならず、グローバル展開も考えるべきと「グローバルコマースを考える上で、マーケティングコミュニケーションを確立し、自社の商品のコアバリューは何なのかをしっかりと見定めて戦略を考える必要があります」と話し『グローバルニッチ』を提案しました。

「ニッチという言葉は古くからあり、隙間の市場を指します。グローバルニッチとは、一つ一つの小さい市場を全世界同時に取ることで何倍にも何十倍にも市場規模を大きくする戦略です」

グローバル展開する上で重要なポイントについて弊社山本は3つのポイントを挙げました。

1. SNS / Shopifyなどのインフラを活用したオムニチャネル

「グローバルコマースを考える上でオムニチャネル化は避けられないですね。先ほど広瀬氏もおっしゃいましたが、現代の消費者はTwitter、TikTok、Instagramなどさまざまな場所にいらっしゃいます。より多くのユーザーにリーチしたければ、自社サイトもブラウザだけでなく、多くのユーザーが使用しているモバイルアプリへの露出が求められます。とくにECサイトであれば、ネット上の“どこでも買える”機能が必要です。実際に各SNSがショッピング機能をこぞって提供してきています。オムニチャネル化しているShopifyであれば、各SNSやモールと商品データなどの連携が簡単にできるので管理もしやすいのが特徴のひとつだと思います」

2. 利用者・ファンを定着させるためには自社EC、自社コミュニティ

「ショッピングモールへの出店だけでは、ユーザー同士の交流もしにくいのでロイヤリティが高まらないですよね。やはり利用者・ファンを定着させるために自社ECや自社によるコミュニティサイトの開設が必要になると思っています。ユーザーに1to1で向かい合うことができ、データ収集や、ユーザー同士の交流も活性化します」

3. 地域・場所ありきで考えない

「これはグローバルニッチを考える上で重要なポイントになります。ネットで世界のどこでも繋がる状況になった現代では、地域・場所ありきで考え始める必要はありません。自社製品のファンの多そうな地域だけをターゲットにするのではなく、世界中のあちこちにいるファンを集めて大きなマーケットとして捉えるのがよいでしょう」

ここで弊社山本は、グローバルニッチ戦略の成功例として、弊社が無印良品と行ったマーケティングキャンペーンの事例を紹介します。

「Instagramにアマチュアからプロまで世界中で無印良品のペンを使ったイラストが多数投稿されていたことに着目し、無印良品のペンを使う人のためのアートコンテスト『MUJI PEN ART CONTEST』を開催しました」
「広告投資をしなかったにもかかわらず90ヵ国へ波及、3,000以上の作品が投稿され、1週間で10万人以上が閲覧し、なんと無印良品の店舗がないアフリカの方からの応募もあったのです」

弊社山本は続けます。
「MUJI PENを使って絵を描くのが好きという気持ちに地域性はなく、世界共通です。繰り返しになりますが、グローバルニッチは地域・場所ありきで始めないことが重要です。今回ご紹介したこの例も、もし北米向けキャンペーンのように地域を限定して実施していたら、おそらくここまで盛り上がることなかったでしょう。これはペンに限らず、多くの商品で一般化できる戦略です」

そして「まさに東映アニメーションさんの作品は熱量の高い作品が多くあるので、グローバルニッチ展開はオススメです」と浮田氏に提案しました。

今回のセッションで明らかになったのは、グローバル展開は今後の企業にとって必須であり、オムニチャネル戦略の重要性でした。その際、グローバルニッチはキーワードになると考えます。

今回の講演内容からも、国内需要が縮小する中でのグローバル展開は必須であり、そのためにはさきほど弊社山本が述べた3つのポイントが、今後はさらに大事になってくるとあらためて感じました。
今後のグローバル展開においても、私たちイーライフがしっかりサポートしていきたいと思います。

■イーライフ実績
デジモンパートナーズ|東映アニメーション株式会社

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