働きながら世界を旅する<#7エジプト・ヨルダン編>
当社は1999年の創業以来、場所や時間、生活環境に縛られることなく、社員一人ひとりが最大限の能力を発揮できるよう取り組んでいます。
フルフレックスやフルリモートの実施、育児・介護との両立支援、さらに近年では国内外でのノマドワークなど、多様な働き方を社員とともに実現しています。社員が仕事と生活の両方を充実させることで、お互いによい影響を与え合い、組織全体の生産性と業務品質の向上に貢献しています。
この連載では、社員が自分らしい働き方を模索し、実践している様子をお伝えします。
はじめに
こんにちは。イーライフシンガポールオフィス所属のグローバルコンサルタント 坂元です。私は2023年から念願のノマドワークを始めていて、月に2~3カ国を訪問し、その地での生活を体験しながら仕事をしています。
本ブログでは、私の海外ノマドワークの体験を通じて、仕事とプライベートのバランスを取る方法や、訪問した国々の文化、地元の人々との交流について連載していきます。
第7回目は、エジプト・アラブ共和国の首都カイロ、ヨルダン・ハシェミット王国の首都アンマンでのノマドワーク体験を通じて、通信環境の確保や時間管理の工夫、現地での人との出会いなどを紹介します。
エジプト・カイロでの滞在と仕事環境
エジプトはアフリカ有数の経済大国で、観光業やスエズ運河の通行料が重要な外貨収入源となっています。
首都カイロは人口密度が高く、リモートワークの観点ではインターネット環境が不安定なエリアも多くあります。今回滞在したホテルは口コミ上「Wi-Fi環境良好」とされていましたが、実際には通信が不安定でした。そのため、近隣の高級ホテルやカフェをワークスペースとして活用し、業務に支障が出ないように対応しました。
リモートワークを成功させるには、口コミに頼るだけでなく、複数の作業場所を事前に確保しておく「バックアップの準備」が欠かせません。私はいつも、eSIMと物理SIMの両方を用意し、現地での通信トラブルに柔軟に対応できるようにしています。限られた時間の中で仕事の質を保つには、「何に投資するべきか」を見極めることが非常に重要です。
カイロでの印象深い出会い
カイロの下町にあるマンシェット・ナセルを訪れました。この地域は「ゴミの街(Garbage City)」としても知られており、主にコプト教徒(キリスト教徒)が暮らしています。エジプトの人口の約9割はイスラム教徒ですが、約1割を占めるコプト教徒がこの地域でゴミ回収・分別といった廃棄物処理の重要な役割を担ってきました。
宗教や経済の事情が複雑に絡み合うこの地域には、一般的なカイロの街並みとは異なる生活様式や価値観に触れることができました。

マンシェット・ナセルの路地にはゴミ回収用の車両が並んでいる

コプト教徒が担う廃棄物処理の現場。マンシェット・ナセルでは、こうしたスペースが各所に点在し、リサイクルの中心拠点となっている
ゴミの街と呼ばれるこの地区にも、静かに人々が集まる場所がありました。洞窟に造られたこの教会では、地域の信仰とあたたかな人々の姿に触れることができました。

教会には子どもたちの笑い声が響き、信仰が暮らしの中にあることを感じられた
道端で出会った現地の女性と仲良くなり、家庭に招かれ、地元の伝統料理をごちそうになるという思いがけない体験も。
「ターメイヤ(豆のコロッケ)」「ムルキーヤ(モロヘイヤのスープ)」「アエーシュ(エジプトのパン)」など、初めて聞く名前の料理が並びましたが、どれも温かくて優しい味。こうしたふれあいは、旅先で仕事をするからこそ得られる“ご褒美”かもしれません。
ヨルダン・アンマンでのノマド体験

紀元前にナバテア人によって築かれた、岩を削って造られた古代都市ペトラ遺跡。現在はヨルダンを代表する世界遺産のひとつ

ペトラ遺跡で最も有名な建造物「エル・ハズネ」。岩を削って造られた正面には、精巧な彫刻が施されている
ヨルダンといえば世界遺産ペトラ遺跡が有名ですが、私にとって特に印象深かったのは、パレスチナ難民キャンプでの体験でした。一見すると普通の街に見えるキャンプエリアも、実際には水道設備の不備やごみ問題など、他の地域とは異なる生活環境がありました。
写真撮影はできませんでしたが、現地のパレスチナ人に案内してもらい、彼らの暮らしを間近で見ることができました。一見、普通の街のように見えていた場所も、歩くほどにインフラの不備や生活の不自由さが見えてきます。そんな中でも、人々はとても温かく、親切でした。
シーシャ(水たばこ)を一緒に吸いながら話したり、夕食をともにしながらサッカー中継を見たり。たった数時間の交流でしたが、想像していた「難民キャンプ」とはまったく違う、人のあたたかさにふれる貴重な体験となりました。
ノマドワーカーとしての「仕事の工夫」
訪れた国々での生活や体験を楽しむ一方、ノマドワーカーとして日々の業務を工夫して両立するのは重要かつ当然のミッションです。今回の滞在で特に感じた秘訣をお伝えします。
【1】ネット環境は命綱。事前調査と複数の選択肢を確保
エジプトやヨルダンでは、国全体の通信インフラが日本ほど整っているとは限りません。だからこそ、事前に「代替手段」も含めて準備することが欠かせません。
- 宿泊先のネット環境は事前に口コミで確認
- 万が一に備え、近くにWi-Fiカフェや高級ホテルがあるかも調べておく
- eSIMと物理SIMを両方持っておくことで、現地でも柔軟に対応可能に
リモートワークでは通信環境が最優先事項。しっかり準備しておくことで、トラブルが起きても落ち着いて対応できます。
【2】集中できる時間帯で仕事を進める
正直、ノマドワークは、どこでも仕事ができるタイプの人でないと難しいと感じます。騒がしい環境では集中できない人にとっては、なかなかハードルが高いかもしれません。
私自身、集中力が切れているときは無理に仕事を進めず、時間帯や場所を変えて対応するようにしています。例えば、昼間に集中できなかった場合は観光に出かけて気分を切り替え、夜の静かな時間に仕事を進めることもあります。
ただ、こうした柔軟なスケジューリングの中でも、緊急対応にはいつでも備えておくことが大前提です。ランチや観光に出かけるときでも、ノートPCや充電器、モバイルWi-Fiは必ず持ち歩くようにしています。
【3】時間管理は“計画”と“柔軟さ”のバランスが大事
ノマド生活を始めてから、「だらだら過ごす時間」が自然となくなりました。やることが明確な分、仕事と観光のどちらにもメリハリがつき、1日の時間を意識して行動するようになったと感じます。
- カレンダーには「この時間にこの仕事を終える」「この時間は観光を楽しむ」といった予定を具体的に記入
- 空港や移動中の時間も、社内ミーティングや企画立案、資料作成、仮眠などに活用
- 時差のある国とのやりとりも多く、オーストラリアと朝5時、アメリカと夜22時に打ち合わせをするなど柔軟に対応
まとめ|「どこでも働ける」は、準備と柔軟性の上に成り立つ
エジプトやヨルダンでの体験は、通信事情や文化の違いと向き合う中で、自分に合った働き方を見つめ直す良い機会となりました。ノマドワークは“自由”と引き換えに、自律と柔軟性が求められますが、だからこそ、見知らぬ土地の誰かとの触れ合いや、その瞬間にしか得られない体験もあります。パソコンひとつで仕事ができるこのスタイルは、私にとって“理想の働き方”に近いのかもしれません。
今後も、世界各国でのノマドワークの様子をお届けしながら、イーライフならではの自由な働き方を伝えていければと思います。